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【書評】『不安の書』――「図書新聞」(2020年1月18日)にて

総称する/締め上げる「名」

いったい作家とは、作品とはなんなのだろうか

評者:荻世いをら氏(作家)

(……)
  巻末に本書の訳者である高橋都彦氏によるペソアと『不安の書』の解説が寄せられている。ペソアについての紹介、それぞれの作品が作品として成り立っていく過程や海外および日本における受容状況、そして『不安の書』編集の経緯と異なる版についての詳細な説明、ペソアとそのテクストについて知っておくべきことを分かりやすく説明してくれている。素晴らしい!こういったところにも訳者の情熱がほとばしっている。だいたい、これほど浩瀚な書を訳す努力と工夫のことを思うと胸が熱くなる。

  しかしながら、このペソアに触れると、いったい作家とは、作品とはなんなのだろうかと思えてくる。当の作家以外の編者、訳者たちがともすれば本人以上の長い時間と労力をかけて、その作家の作品として世に出してくる。ただこれはおためごかしにまとめられがちな「想い」とか「気持ち」とか簡単に呼ぶものによって成り立っているんじゃないか。そうまさに不安、見知らぬ人から人へとつないでいく不安の信託、そういうものが実のところ、怒りや悲しみ、あるいは友愛という感情以外に驚くほど激しくわたしたち人間を結びつけるのではないだろうか。

 

 

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