スージー鈴木のロックンロール・サラリーマンのススメ 第5回

第5回 たくさん来た依頼を、混乱せずにビシバシこなす方法

会社員を辞めてフリーになってから早半年。地道に粛々と薄利多売でがんばっております。スージー鈴木です。

さて、ロックンロールな表現活動で大成功することを想像してみます。たくさんの依頼がガンガン来て、それらの依頼にビシバシ応えて、大儲けしているロックンロールな俺ってBIGだろ、状態。

ということは、サラリーマン時代を、「たくさんの依頼が来るのをビシバシこなすマルチタスクな俺」になる訓練期間と捉えればいい。そうすると、表現活動でフリーになったときに成功しやすいはず。

私は、広告代理店に勤めていました。当時はもう、激烈なマルチタスクでした。下手すると10本くらいの案件が同時並行していて、何からどう手を付けたらいいか分からない混乱状態の中で、30年間過ごしてきたような気がします。

転じてフリーになって、さすがにあのときのような混乱状態の中にはいません。まぁ、地道に粛々とやっているのですが、逆に、フリーになって、あのときの依頼量・案件量をビシバシこなしていけば、本気でBIGになれると思います。

あと、これは職業や人にもよると思いますが、私の経験から言えば、フリーに比べて、サラリーマンの方が仕事を断りにくい。

サラリーマンにおいては、取引先からの依頼は言うまでもなく、会社の中からの依頼も、組織構造の中で、上から引力を持って落ちてくるので、受け取らざるを得ない、投げ返せないんですね。

というわけで今回は、表現活動でフリーになってBIGになるために、サラリーマン時代に学んでおくべき「たくさんの依頼をビシバシこなす方法」について。

30年間の混乱状態の中で分かったことは、この問題の本質は、「1つの依頼が来て、それが片付かない間に、別の依頼が来て……を繰り返している間に、応えるべき案件群の全体像が可視化されていない状態が生む不安との戦い」なのです。

分かりやすく言うと、「あの依頼とあの依頼がさっき来たけれど、忙しすぎて、全体像がつかめなくって、どれとどれをいつまでにやればいいか分からない未整理状態、ああ不安だ!」という気分。これ、サラリーマンあるある。

ということは、解決方法の第一は、「とにかく依頼が来たら、まずはリスト化する」こと。手書きでもPCでもスマホでも、どこでもいいので、来た案件と、出来ればその締切を、どこかにメモ書きすること。

私は、GoogleカレンダーのTo Doリストを使っています。でも何でもいい。付箋紙に手書きでもいい。来たら、とにかくどこかに書いておく。

これ、経験者ならお分かりになるはずですが、書いた瞬間、不安が2割くらいスーッと減るのです。書いた瞬間=つまり脳の外に具象化した瞬間、もう具象があるのだから、その依頼を一瞬忘れることが出来る。 だから不安がスーッと減る。気持ちいい。

つづいて解決方法の第二として、それら案件をこなしていくステップとして「出来るだけ作業っぽい、つまり、頭を使わずに出来るものから手を付けていく」こと。たとえば、メールの返信とか、請求書作りとかの定型フォーマット業務。

それで身体が温まってくれば、作業的業務から、より高度で複雑な、思考的業務に移していく。つまりウォームアップを経てから、全速力に切り替えるということですね。

ですが、この問題に対する最も有効な方法としておすすめしたいのが、「まずとりあえず、ちょっとでもいいからすべての案件に手を付けてみる」ことです。つまり「試食」をするということ。

概念的な図を作りました。左が、まだリスト化されていない案件も複数あるとの脳の状態。一つひとつの円が依頼。円の大きさがその依頼の重さのイメージ。それぞれの依頼の重さがちゃんと認識できていないので、すべてが重くて大きく、かつ今すぐやらなければいけない感じでパンパンになっている。

しかし、ちょっと「食べてみる」=手を付けてみると、真の重さが把握できる。やってみたら「やべ、こりゃやっぱ重いわ」という依頼もあるでしょうが(赤)、逆に、「あ、これ俺やんなくていいじゃん」ということで脳の中から削除できる依頼もあったりします(青)。あと、位置(=依頼の順序や関係性)も整理された感じ。

今回3つの方法をお教えしましたが、まとめると「リスト化し、作業っぽいのから、すべての案件にちょっとずつ手を付けることで、脳の中にある依頼群の解像度をグッと上げて、不安やストレスを減らそう」ということになります。

今回書いたことは、広告業界とか、激烈かつ無防備な仕事環境にいる方なら、体験的に納得できることでしょう。私はそれを、ロックンロールを目指すすべてのサラリーマンに開いてみたいと思うのです。

そしてこの原稿を書き上げた今、私のTo Doリストから1つの依頼が削除されました。めでたしめでたし。

[ライタープロフィール]

スージー鈴木(すーじーすずき)

音楽評論家、小説家、ラジオDJ。1966年11月26日、大阪府東大阪市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。音楽評論家として、昭和歌謡から最新ヒット曲までを「プロ・リスナー」的に評論。著書・ウェブ等連載・テレビ・ラジオレギュラー出演etc多数。
著書…『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ 1978-1985』(新潮新書)、『カセットテープ少年時代』(KADOKAWA)、『チェッカーズの音楽とその時代』(ブックマン社)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『【F】を3本の弦で弾く ギター超カンタン奏法』『1979年の歌謡曲』『80年代音楽解体新書』(いずれも彩流社)。近著に『ザ・カセットテープ・ミュージックの本』(マキタスポーツとの共著、リットーミュージック)、『恋するラジオ』(ブックマン社)。
ウェブ連載…「東洋経済オンライン」「FRIDAYデジタル」「水道橋博士のメルマ旬報」など。