湘南 BENGOSHI 雪風録 第21回

山本有紀

労働事件の類型の一つとして、残業代支払請求事件、すなわち、未払になっている残業代の支払を会社に求めるというものがある。

会社側と働く人との間で取り決めた「何時から何時まで働く」(所定労働時間)という合意を超えて働かざるを得なかったときには、その労働時間について、1分単位で残業代が発生する。

また、労働時間に関する原則として、1日について8時間、1週間について40時間を超えて労働させてはならないという労働基準法32条の定めがある。長時間労働を抑制するためにも、この定めを超える労働に対しては、割増賃金といって時給の25%増しの給料を支払わなくてはならないと定められている(労働基準法37条1項本文)。

そして、定時後の残業はもちろん、早出で勤務した場合にも残業代が発生する。また、労働基準法は、使用者は労働者に対し、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないと定めている(同法34条第1項)。ぎりぎりの人数で回している忙しい職場で、休憩をちゃんと取らずに勤務に戻る等の場面は結構あると思うが(私も飲食のバイトでそうだったことがある。同僚のみんなが頑張っているから私も休憩なんかしている場合ではなくて、早く戻って仕事をしようと思っていた)、休憩時間に関するこの労基法の定めは、会社と働いている本人が合意したからといって短縮することはできない。この、休憩時間に食い込んだ勤務についても、残業代が発生する。

元々は60分休憩の契約内容で勤務を開始したのに実際には30分しか昼休みが取れない場合や、一応お昼休憩はあるものの、電話がかかってきたら対応しなくてはいけない(実質的に休憩できていない)場合に、その30分や60分の労働に対して、毎日残業代が発生し積み上がっていくので、請求時には存外に大きな額になっていることが少なくない(もっとも、休憩時間にどのくらい働いていたかということの証明は簡単ではないものの……)。

未払の残業代請求をすることになり、弁護士から未払いになっているお給料

の総額や、自分が残業した時間の総量を示されて初めて、自分のエネルギーをどう会社に捧げてきたかということに思い至るご相談者さんもいるようだ。

ところで、裁判所は、訴訟提起された事件を各部に配点して担当している。横浜地裁であれば、民事事件は第1民事部から第9民事部まである。

各部に大体5人くらい裁判官がおり、その命令に従って職務を行う者として書記官がいる(裁判所法60条4項)。書記官さんのお仕事は、裁判手続に関する記録の作成、保管や事務手続、裁判官の行う法令や判例の調査補助である。ある事件のことで裁判所に問合せをすると、対応するのは基本的にはその事件を担当している部の書記官さんである。最近であれば、オンラインで期日を開くにあたっての、マイクロソフトチームスの設定のためのメールのやり取りも書記官さんが担当している。

一方で、書記官さんを含めた裁判所の職員はこのところ毎年減らされている。今年も、2月1日付で「裁判所職員定数法の一部を改正する法律案」なるものが国会に提出されており、この内容は書記官さんが含まれる「裁判官以外の裁判所の職員」の定数を26人減らすことを打ち出している。この流れは今年に始まったものではなく、去年も17人、一昨年も17人、その前は13人、35人、35人とどんどん定数を減らしているのである。

私は自分のお昼休みの時間帯に、裁判所にうっかりお電話してしまうことがある。書記官さんは電話に出てくれる。

窓口の対応も、お昼であっても実際にはしてくれる。お弁当を食べている書記官さんが立ち上がって対応してくださるのである。でも今は、あなた、お昼休みですね……。

なお書記官は国家公務員特別職だから、労働基準法は適用されない。しかしそれに代わる法律はあるようだ。