湘南 BENGOSHI 雪風録 第19回

  

山本有紀

 

 お客さんの喜ぶ顔をみると、素直に、とっても嬉しい。

 また何かあったら先生に頼みます等と言ってもらえると、何もないように……あなたの人生に今後弁護士なんて必要のないように……幸あれ……と思いながらもはちゃめちゃに嬉しい。

 自分が(願わくは)相手にとって、頼れるりりしい味方であれたなら本当に良かったと思う。

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 しょっちゅう宝塚が好きだと言って回っているけれども、年始ですのでここでも書きます。

 宝塚を全く知らない人のために、宝塚、すなわち宝塚歌劇団とは、いわゆるタカラジェンヌと呼ばれる女性のみで構成された劇団である。1組80人くらいからなる5組(花組、月組、雪組、星組、宙組)と専科がある。

 兵庫県宝塚市と東京都有楽町にひとつずつ専門の劇場(宝塚大劇場と東京宝塚劇場)があり、ほぼ1年中何かしらの公演がかかっている。

 また梅田芸術劇場や、東急シアターオーブ等で、いわゆる外部公演も行う。

 今年であれば月組が、宝塚大劇場で元旦から約1ヶ月間公演をしたあと、東京宝塚劇場に移動し、また1ヶ月公演をする。2月になれば次は宙組の宝塚大劇場公演が始まる。

 公演期間中は、大体3時間くらいある演目(歌いっぱなし踊りっぱなしである)を1日2回やることもあるハードスケジュールが続く。休演日は週に1回だ。

 

 一つの公演が終わっても長いお休みがあるわけではなくて、また次の宝塚大劇場公演が始まるまでの間、外部で公演をすることが多い。

 そもそも、タカラジェンヌになるためには、中学3年〜高校3年の4回のみ与えられる受験チャンスの中で合格し、宝塚音楽学校に入らねばならない。

 宝塚音楽学校の合格倍率はおよそ20倍で狭き門だし、音楽学校を卒業して宝塚の舞台に立っても、いわゆるスターシステムの中で、しのぎを削らなくてはならない。

 健やかで、勤勉で、熱心で、清く正しく美しくあらなければならないのである。

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 宝塚の代表的な演目は、なんといっても(多少の古さは否めないものの)(ごめんなさい)『ベルサイユのばら』であり、オーストリア=ハンガリー帝国の没落を描く『エリザベート』である。歌姫と怪人の悲恋を描く『ファントム』や、『ロミオとジュリエット』、『ミーアンドマイガール』などもよい。これらはいわゆる「再演もの」で、繰り返し公演されているが、再演されないものの中にも美しい名作は星の数ほどあり、見逃せない。

 かっこいい男役をみて宝塚ファン同士キャーと言い合うのはほとんど意味不明なくらい楽しく、かわいい娘役を見てきゅるんきゅるんするのは驚くほど気分が高揚する。しかし最終的にはやはり、りりしいものをみたいと思って観ている。私もこうなりたいと思って観ている。健やかで、勤勉で、熱心で、清く正しく美しくなりたいとおもってみている。

 舞台の上にキラキラと並ぶタカラジェンヌは皆りりしい。

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 その宝塚歌劇がまた休演になってしまった。

 東京宝塚劇場の花組公演と、東京国際フォーラム(外部)の雪組公演である。

 正直ほんとに暗澹たる気持ちになる。彼女たちの健やかさ、勤勉さ、熱心さに対してあまりにも酷い事態である。

 とはいえ、ウイルスが開演を邪魔しても、だれもあなたたちのりりしさを奪えない。

 私の観劇予定も無くなりました。

 いじけそう? いいえ? りりしく働くわ! 今度あの赤い椅子に座るまで!

 タカラジェンヌさんたち!! 私(たち)はあなたたちをめちゃくちゃ必要としている!!

 今年はよく働きよく遊ぶ年にしたいと思います。

 

[ライタープロフィール]

山本有紀

1989年大阪府生まれ。京都大学卒業。
大学時代は学園祭スタッフとして立て看板を描く等していた。
神奈川県藤沢市で弁護士として働く。
宝塚歌劇が好き。

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