湘南 BENGOSHI 雪風録 第13回

  

山本有紀

 

 

◇4月○日

 ユニクロに買い物に行く。
 紙袋が1枚10円だった。

⁂ ⁂ ⁂

 コンビニの袋が有料になってひさしい。
 適応してマイバッグを持つようになった。折り畳んで小さくできるものを鞄に入れている。
 1枚3円で買ったコンビニの袋も持ち歩いている。買ったものをそのまま事務所の冷蔵庫に入れるとき用だ。

 ユニクロのレジで紙袋が10円と知り、いっそ手で持って帰ろうかと思ったが、服を買ったことによる一種の気分が損なわれると思い直した。同時に、ユニクロから勝手に服を持ってきた人と勘違いされるのではないかと危ぶまれた。
 そこで泣く泣く紙袋を買った。
 紙の手触りからして、正直あんまり長持ちはしなさそうです……。

 ところで、お客さんに対して、買い物袋を売るか無料にするかは、本来であればお店側の自由である。
 本来とは外れて2020年7月1日から、お店がお客さんに品物を入れて渡すプラスチック製の買い物袋は原則有料化した。
 経済産業省が、プラスチック製の買い物袋有料化を説明するサイトを作っている(https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/plasticbag_top.html)。
 内容を見ると、「2020年7月1日から有料化がスタートします。」と誰がスタートさせているかは一見してわからないものの、有料化がスタートしている。

 上に述べたとおり、本来買い物袋をあげるか売るかはお店の自由だから、買い物袋の有料化は、お店側の自由を制限するものに外ならない。
 人の自由を制限するときには根拠が必要だ。
 プラスチック製の買い物袋有料化は、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」の7条の4第1項に基づいて定められている「小売業に属する事業を行う者の容器包装の使用の合理化による容器包装廃棄物の排出の抑制の促進に関する判断の基準となるべき事項を定める省令」を根拠としている。

 ところで、紙袋については、有料化の根拠があるでしょうか。
 それともユニクロの自由で、紙袋を1枚10円で売っているのでしょうか。

 

◇4月△日

 会社側に一方的に労働条件を変えられて、それに伴い給与も減らされたという相談を受ける。

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 ここでいう労働条件とは、勤務時間や、勤務日数や、手当等だ。
 合意なき労働条件切下げ等と呼ばれるこのタイプの相談を受けることが私は比較的多い。

 私自身も、週○日勤務と決められているのに、天気が悪いと直前でお休みを告げられるアルバイトをしていたことがある。
 そのときは、今月のバイト代、思い描いていた額より減っちゃうな……と思いつつも、雇い主に意見することはなかった。雇われていることに感謝していて、文句の多いやつと思われるのが嫌だったからだ。

 そうでなくても多くの相談者さんはこう言う。周りの同僚も同じ扱いだけれど、文句を言っても変わらないと諦めているんです。

 自由の制限と同様、人に不利益を与えるにはちゃんとした根拠が必要だ。
 自由の制限や不利益を被ったとき、その根拠を確かめるということ自体が、多くの人にはあまり馴染みがないと思う。馴染みがないことの裏表として、一方的に自由が制限されたり、不利益を与えられたりすることに慣れすぎてしまっているように思われる。
 さらにその表裏として、疑問を呈することには、多くの人が慣れていないように思われる。

 

◇5月□日

エリザベート・ガラコンサートを配信で見る。
4月28日から観客を入れての公演が中止になり、無観客での配信に切り替わったのだ。

⁂ ⁂ ⁂

劇場が幕を上げる自由を制限する根拠はなんでしたっけ。
エーヤントート…!

 

 

[ライタープロフィール]

山本有紀

1989年大阪府生まれ。京都大学卒業。
大学時代は学園祭スタッフとして立て看板を描く等していた。
神奈川県藤沢市で弁護士として働く。
宝塚歌劇が好き。

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