耳にコバン 〜ブリットポップ編〜 第12回

  

第12回 オールライト

コバン・ミヤガワ

 

ボクにとって、そのカタカナ三文字は、耳にする分には心地いいワードだ。

語呂が良く、小気味いい。つい言いたくなる。

 

ところがどうだ、最近毎日テレビやら、ネットで耳にするその耳障りのいい三文字は、目に見えず、知らぬ間にボクたちの体に入り込み、蝕もうとする。

世界中で人々を見えない恐怖で怯えさせている。

 

名前とやっていることの差よ!

これだけ悪さを働くのなら、もっと悪そうな名前にしたらどうだ!

調べてみると、あの名前はラテン語で「冠」を意味するらしい。ウイルスの形が冠に似ていることから、あの名前になったとか。

語源はともかく、可愛らしい言葉の並びだと思う。

 

もしこんな事態にならなかったらどうだっただろう。

犬の名前に付けられていても、なんの不思議もない。「あら可愛いワンちゃんだこと!」とナデナデすることだろう。

パンの種類の1つだと聞かされても、なんら違和感を覚えることはないだろう。「チョココロネみたいな形してんのかな?」と思うくらいだろう。

 

名前とは裏腹に暗い話ばかりだ。気分も落ち込みがちになる。

なるべく外に出るな。マスクをしろ。自粛自粛自粛etc.

いろんな意味で息苦しい。

 

息が詰まりそうな毎日の気分転換に、散歩をするように心掛けている。

それくらいなら許されるだろう。許されなきゃヤッテラレナイヨ!

無論マスクを付けている。元来マスクをする人間ではないので、あまり慣れたものではない。息苦しいし、外出をあまりしないうちにこの暑さになっている。ますます苦しい。

ボクのマスクへのヘイトは溜まる一方。

 

とはいえ散歩は好きだ。

歩きながら好きな音楽をかけて、いろいろ考える。知らない道を歩いてみる。

これだけのことなのに、とても気分がいい。しみじみ散歩の素晴らしさを実感する。

 

ある日のこと、いつもの様に散歩に出掛けた。

外に出ると暑い。気がつけばこんなに暑いのか。

歩き出すと、すぐに体は汗ばみ「失敗失敗……」と上着を脱いだ。

小一時間歩いて、さあ帰ろうと家に足を進めていた。

夕陽が眩しい。雲なんてない、ピーカンな空。

 

あまりに眩しいので、自然と眉間が狭くなり、目つきが悪くなる。

しばらく歩いていると、前からお母さんらしき女性が、ベビーカーを押しながら歩いてくるのが目に入った。

ベビーカーには赤ちゃんが座っていた。

 

なんと可愛らしい! 宝である。

赤ちゃんの前では、なるべく笑顔でいたい。

 

さあ、通り過ぎようかという時だ。

「ま、眩しいっ……!」

夕陽で目が開かない。せめて笑顔でいなくては……

「アァ! マスク!!!」

マスクのせいで顔が分からないじゃないか!

かと言ってわざわざ外すのも違う。どうすればいいんだっ!!!

 

ジー……

 

通り過ぎた。

赤ちゃんにメンチ切ったヤツみたいになっちゃったじゃん!

 

その子からすれば恐ろしい形相だったことだろう。マスクをしたモジャモジャ髪の男が自分を睨んでいるのだから。

運の悪いことに赤ちゃんは、ボクのことをマジマジと見続けていた。

「違うんだヨォォ!!」

その後、トボトボ家路についた。

 

帰ってからも、しばらく悩んだ。

もしもあの子に恐怖を植えつけてしまったらどうしよう。

「大人は怖い」みたいな感情を与えてしまったら。

計り知れない傷を負わせていたら……

 

妙なところで気分が落ち込んでしまうことがある。

そんなこんなで小一時間悩んだ。ごめん、ごめんよ赤ちゃん。

 

マスク嫌い。

まあ、憎むべきはマスクを付けることを強制し、散歩に向かわせたウイルスだが!!

散歩は好き。

でもあのウイルスが悪い。そう、あいつのせいだ。

マスクが取れたら満面の笑みで街を歩こう。いや、少し気持ち悪いか。

 

皆さん、呉々もご自身の体を大切になさって。

そして赤ちゃんを誤って睨みつけないように気を付けましょう。笑顔笑顔。

この2つ、とても大事。

 

気分が落ち込むこのご時世。ステイホームの時間やお散歩のお供に、少しでも気分の上がる一曲を。

 

スーパーグラス(Supergrass)というバンドをお勧めしたい。

1993年結成、オックスフォード出身のバンドだ。

オックスフォード出身のバンドといえば、他にレディオヘッドが挙げられる(耳にコバン第4回で紹介)。レディオヘッドのライブのオープニングアクトで演奏をしたこともあるようだ。

レディオヘッドのノイジーで繊細なサウンドとは対照的に、明るくエネルギーに溢れたサウンドを特徴としている。

 

そんなエネルギッシュなスーパーグラス、1995年のファーストアルバム『I Should Coco』から一曲紹介させていただきたい。

ものすごくエネルギッシュ!

ポップでパンクなサウンドが目白押し。

あふれんばかりの音楽への情熱と若さをギュウギュウに詰め込みました! そんなアルバムだ。

 

 

エネルギーありすぎて顔はみ出しちゃってますよ、お兄さんがた! 目力すごい!

インパクト大なジャケット。

 

このアルバムで最も語るべき一曲は、なんと言っても4曲目の「Alright」だ。

「オールライト」ってものすごくいい言葉。

「オールライッ!」と言えば不思議と元気が出てくる。

素敵な言葉だ。

 

まずはイントロ。

ピアノの軽快なリズムから始まる。

お高いグランドピアノなんかじゃない、チープなアップライトピアノから出てきそうな音。

これがまたいい。乾いたような、軽い音が曲の軽快さを引き立てている。

 

無骨で荒々しいドラムもエネルギッシュでこれまた合う。

歌はシンプルで覚えやすく、歌いやすい。

歌詞を見てみよう。

 

We are young, we run green

Keep our teeth nice and clean

See our friends, see the sights

And feel alright

 

We wake up, we go out

Smoke a fag, put it out

See our friends, see the sights

And feel alright

 

Are we like you?

I can’t be sure

Of the scene as she turns

We are strange in our worlds

 

But we are young, we get by

Can’t go mad, ain’t got time

Sleep around if we like

But we’re alright

 

Got some cash, bought some wheels

Took it out, ‘cross the fields

Lost control, hit a wall

But we’re alright

 

若さ、溢れ出る若さ。

「どうなったって大丈夫さ、だって俺たちゃ若いんだ!」

若さがもたらす楽観的人生観。

 

この曲の魅力は、1にも2にもここにある。

「友達と会えれば気分上々!」

「ちょっと世間からはみ出ちゃっても大丈夫!」

「自転車で壁にぶつかっちゃっても平気!」

10代のキラキラとした毎日と、それを全力で謳歌する少年たち。

そんなキラキラした曲なのだ。

 

「オールライト」な精神はとても気持ちがいいものだ。

特にこんな暗い世の中である。

息の詰まりそうなステイホームの今日この頃に、若々しく「オールライト!」「大丈夫!」そう唱えて、暗い雰囲気を吹き飛ばしてみるのはどうだろうか。

 

気になった方は是非ミュージックビデオも観て欲しい。

これがまた元気が出る!

何だか分からないけど微笑ましい!

少しマヌケで、でもカッコ良くってヤングなスーパーグラスを堪能できる。

 

オールライッ!!!

やはり素敵な言葉。

 

 

[ライタープロフィール]

コバン・ミヤガワ
1995年宮崎県生まれ。大学卒業後、イラストレーターとして活動中。趣味は音楽、映画、写真。
Twitter :@koban_miyagawa
HP:https://www.koban-miyagawa.com/

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