耳にコバン 〜ブリットポップ編〜 第11回

  

第11回 ワールドワイドに聴いてみる

ここ数年、いろんな国の音楽に熱を上げている。

これまで聴く音楽といえば、日本、アメリカ、イギリスのポピュラーミュージックが主だったが、いろんな地域の素晴らしい音楽を聴き漁っている。

 

ある時はアフロビートを聴いてみた。アフロビートとはアフリカ発祥の音楽ジャンルで、ファンキーで軽やかなビートが特徴だ。

またある時は、ペルー辺りのフォルクローレの曲を聴いたり。「コンドルは飛んでいく」を想像していただくと簡単だ。あんなジャンルの曲である。連なった縦笛を吹いているイメージだ。

さらにはトリニダード・トバゴ発祥のカリプソミュージックで、聴こえてくるスチールドラムの音色からカリブ海に思いを馳せたりと、世界にはボクの知らない音楽がまだまだある。

そう思うだけでキュンキュンが止まらないのだ。

世界の音楽もいつか紹介できたらいいなと思うばかりだ。

 

なかでもインドの音楽には特段ときめいている。

インド音楽というと、独特の音階なども特徴的だが、なんといってもシタールの存在が大きい。

「インドっぽい音楽」を耳にすると聴こえてくる「パインパイーン」と響く弦楽器だ。

ギターやバイオリンとは異なる形をしており、弦の数も多く、20本近い弦を何とも幻想的に奏でるのである。

一度だけシタールの生演奏を聴いたことがあるのだが、繊細で伸びやかな音に空間全体が包まれ、何ともいえない神秘的な演奏に魅了された。

シタールの他にも、タブラと呼ばれる太鼓のような打楽器も昨今知名度が上がっている。

 

シタール(wikipediaより引用)

タブラ(wikipediaより引用)

 

ボクが初めてシタールを知ったのは、恐らくビートルズだったと思う。

まだビートルズをそこまでよく知らなかった頃だ。

『ラバーソウル(Rubber Soul)』というアルバム の一曲「ノルウェーの森 (Norwegian Wood (This Bird Has Flown))」で使用されていたのを聴いたのが初めてだった。

ギターとも違う不思議な音の弦楽器だと気になり調べてみた。

「ノルウェー全然関係ないじゃん!」

はじめはそう思ったが、聴けば聴くほど不思議とあのサウンドがしっくりくる。

アコースティックギターのまろやかな音と、シタールが持つアコースティックギターにはない音の伸びと金属音っぽさが見事に調和している。

 

後にジョージ・ハリスンがインド音楽に傾倒していったのは有名だ。

他にも「アクロス・ジ・ユニバース」や「ジ・インナー・ライト」などでもシタールは使用されており、いずれも良曲なので気になった方は是非聴いてみて欲しい。

 

「ノルウェーの森」がロック史上最初のシタール登場であり、そこからシタールをはじめインド音楽が様々なシーンで取り入れられていく。

 

今回紹介するバンドも、インド音楽の影響を色濃く受けている。

クーラ・シェイカー(Kula Shaker)だ。

1995年にデビューした、ロンドン出身のバンドである。

バンド名の由来はインドの王様の名前だそう。名前からしてインドの影響受けまくり。

 

ギターボーカルのクリスピアン・ミルズ(Crispian Mills)がインドを旅し、そこで触れたインド文化や仏教・ヒンドゥー教などに深い感銘を受ける。

クーラ・シェイカーの音楽性には、クリスピアンがインドで受けた影響が大きく関わっている。彼自身、仏教に改宗している程の熱中ぶりだ。

そんなインド音楽を活かしたサイケデリックなサウンドで、ブリットポップの人気者の仲間入りを果たした。

 

今回は、クーラ・シェイカーの1996年のファーストアルバム『K』を紹介していこう。

全英1位を獲得し、大ヒットを記録したこのアルバムは、アメリカ、日本でもヒットを飛ばした。特に日本ではクリスピアンの美貌も相まって人気を博した。

 

 

見るからに漂うインドっぽさとサイケ感。たまらない。

 

このアルバムで名曲と評価されているのは、一曲目「Hey Dude」だろう。

 

何と言ってもワウ(エフェクターの一種で、ワウペダルとも呼ばれる。ペダルを踏むことで音域に変化を与え、サウンドに抑揚を付けることができる。演奏中に使用すれば、名前の通り「ワウワウ」と聞こえる)のサウンドが最高なのだ。

うーんサイケ!

個人的にサイケデリックロックにワウは欠かせないと思っている。

ジミヘンの影響だろうか。

 

一曲目からインパクトが素晴らしい。

クリスピアンのミステリアスでのっぺりとした歌声は、起伏があまりないインド音楽の影響なのだろうか。

随所で聴こえてくるギターのサウンドが、どこかシタールっぽさを演出している。

 

インド音楽に完全に没入するわけではなく、彼らのロックンロールとインド音楽が見事なバランスで調和した名曲である。

 

もちろん、「らしさ全開」の曲もある。

もっとインドらしい曲を聴きたい方には4曲目「Govinda」や9曲目「Tattva」をオススメしたい。「シタールが美しく響く、でもポップ!」といった具合の曲だ。

 

『K』は全曲通してしっかりとポップでロックである。

インド音楽に傾倒しつつも、かといってロックらしさは失わない。

王道ではないが脇道にも入りすぎない。そんな名盤だ。

 

ところで、クーラ・シェイカーがここまで人気になった理由として「ブリットポップの倦怠期」はあると思うのだ。

デビューするバンドが「王道ポップ」なロックバンドばかりであることにリスナーが少し飽きてきたのではないか。

そんな中、登場したのがクーラ・シェイカーだったのだ!

彼らの作ったサイケでインド味で、しかししっかりポップな音楽。

リスナーの耳にはミステリアスで斬新なキラキラしたアルバムだったに違いない。

 

だからこそ彼らの音楽はブリットポップの中で燦然と輝きを放っているのだ。

90年代が生み出した、最高のサイケデリックロックバンドといっても過言はない。

 

普段あまり民族音楽やワールドミュージックを聴かない皆さんも、世界中の音楽に目を向けてみると面白いかもしれません。

意外に好みにピッタリハマるジャンルが見つかるかも。

 

 

[ライタープロフィール]

コバン・ミヤガワ
1995年宮崎県生まれ。大学卒業後、イラストレーターとして活動中。趣味は音楽、映画、写真。
Twitter :@koban_miyagawa
HP:https://www.koban-miyagawa.com/

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