耳にコバン 〜ブリットポップ編〜 第10回

  

第10回 「聴くロック、観るロック、着るロック」

コバン・ミヤガワ

 

 

ハイ! ストップ!

皆さん「ビートルズ」の4人の姿をパッと想像してみてください。どんな格好をしていますか?

若かりし頃のマッシュルームカットにスーツ姿? アビーロードを歩く長い髪と髭の4人? 「ハローグッバイ」の映像のカラフルなコスチューム?

人によって答えはそれぞれだと思う。では「ビートルズのトレードマークは?」と問われたらどうだろう。ほぼ全員が「マッシュルームカットにスーツ姿」のビートルズと答えるのではないだろうか。初期のビートルズではあるものの、4人揃ったスーツと髪型はインパクトが強い。ということで今回は「音楽とファッション」について書いてゆきたい。

 

さて、ビートルズのトレードマークになっているマッシュルームカットにスーツという姿。あのファッションには名前がある。

「モッズ(Mods)」ファッションという。

50〜60年代のイギリス(ロンドン)を代表する若者のファッション、ライフスタイルだ。モダーンズ(Moderns)という言葉の略である。「モッズコート」という言葉を聞いたことはないだろうか。そのモッズである。モッズファッションをしていた人たちが好んでいた、アメリカ軍の「M-51」というミリタリーコートのことを「モッズコート」と呼ぶようになったのである。

ビートルズが身につけていたスーツも「モッズスーツ」という。モッズスーツの特徴としては、前は3つもしくは4つのボタン、細身でタイトなシルエット、細いネクタイなんかが挙げられる。

 

服装だけでなく、都会に暮らす若者たちのライフスタイルにも「モッズらしさ」は現れる。昼間は仕事に励む。そして夜になると仕立てたモッズスーツに身を包み、クラブへとくり出すのである。移動手段はスクーターだ。車を買うほどの余裕はなく、かと言ってドデカいバイクだとスマートではない。そこで適任だったのがスクーターだったのだ。寒い日には上からモッズコートを羽織る。聴く音楽はR&Bやモダンジャズ。ロックンロールやロカビリーは「田舎者の音楽」として馬鹿にした。それが彼らのスタイルだった。

ここで疑問が湧いてくる。「果たしてビートルズは真のモッズなのかどうか」。考えていこう。

 

ビートルズはモッズファッションに身を包み、世界的に有名になった。しかし、彼らが初めから皆お揃いのモッズスタイルでバンド活動していたわけではない。デビューするまでは、レザージャケットにジーパン、いわゆる「ロッカーズ」と呼ばれるファッションで活動していた。そう、元々はロックンローラーらしいファッションで活動していたのだ。

そこで登場したのが、マネージャーのブライアン・エプスタインである。ビートルズの音楽的才能を見出した人物だ。彼がビートルズをデビューさせる際に、お揃いのモッズスーツというスタイルで世に送り出したのだ。結果は言うまでもない。ビートルズは全世界で人気を博し、音楽の歴史を変えた。「魅せ方」としては完璧だったと言えよう。

つまり、ビートルズは「モッズスーツ」がトレードマークになっているものの、真の「モッズ野郎」ではないのだ。あくまでも、衣装としてのモッズファッションだったということになる。実際、真のモッズ野郎たちからのビートルズの評判は芳しくなく、どれだけ有名になろうと受け入れられなかったという。

それもそのはず、モッズにとってロックンロールは田舎の音楽だったのだから。ビートルズに対しても「リヴァプールのロックンロールをやる田舎者」という認識だったらしい。

 

とはいえ、ワイルドなファッションではなく、小綺麗なスーツに身を包んでいたからこそ、ビートルズのロックンロールは、ここまで世界中に受け入れられたのだと思う。たとえ見せかけであっても、ビートルズをモッズに仕立てたことは正しかったのではないだろうか。もしも、そのままロッカーズのファッションでバンドを続けていたら、ここまでのバンドにはならなかったのかもしれない。

そう思えるほど、音楽におけるファッションの果たす役割は大きい。

ビートルズほどの大きなバンドだと、「ビートルズスタイル」とでも言おうか、彼らが1つのスタイルとして確立されるが、もっと大きな括りで考えたい。パンクロッカーのファッションといえばどうだろう。ライダースジャケットや、破れたジーンズ、チェーンのネックレスなんかが想像できないだろうか。メタルというジャンルであれば、長い髪の毛を振り乱しギターなんかを弾く姿、ヒップホップであれば、ストリートスタイルのファッションといった具合だ。

 

では、ブリットポップにおけるファッションのスタイルとはなんだろう。

ブリットポップにおける決まったファッションスタイルは存在しない。ただ、スタイルとまではいかないが、よく目にするものがある。ジャージである。

 ブリットポップ期のアーティストはジャージやウインドブレーカーなんかをよく着ている姿を目にする。ステージ衣装というよりも、家からそのままステージに上がってきた様な服装なのである。オアシスの映像を見ていると、ボーカルのリアムはキチッとした服装ではなく、アディダスのジャージなどユルいファッションが多い。別にジャージを馬鹿にするわけではないが、もっと良い衣装着ればいいのに! スターなんだから! どうしてジャージなんだ!

 

ちなみに、ボクはジャージにいい思い出がない。高校のジャージが果てしなくダサかったからだ。あずき色とネイビーのとてつもなくダサいジャージを3年間着ることを強いられたのだ。かと思えば、1つ下の学年からデザインが変わり、カッコいいジャージになっていた。羨ましい……。というか先生たちも薄々「ダサい」と思っていたに違いない。だからこそデザインを変えたのだ。そう思っている。

 

ジャージはカッコいいとは思えない。ましてやステージでそれを着るなんて驚きである。オアシスだけでなく、ブラーのデーモンもレディオヘッドのトムもジャージをよく着る。どうしてなのか。個人的な見解は後々書いていこう。

 

そろそろ今月の音楽を紹介しなくては。今月は、オアシスをもう一度紹介したい。オアシスについては以前にも紹介しているが、一度では語りきれないので書かせていただく。

さあ、そんな大好きなオアシス1994年のファーストアルバム『Definitely Maybe』を聴いていこう。

 

 

これが本当にファーストアルバムなのか!? とてつもないクオリティだ。このアルバムは全世界で1000万枚を超える大ヒットとなっている。1曲目の「ロックンロール・スター」から熱量が凄まじい。「トゥナーイ・アイマ・ロッケンロー・スター!!」思わず歌いたくなる。

そんなバケモノアルバムの3曲目「リヴ・フォーエバー(Live Forever)」を注目していきたい。オアシスの曲で初めて、シングルチャートでTOP10に入った曲である。オアシス自身も「この曲は今までと何か違った」と述べており、彼ら自身も胸を張っていた様だ。さあ、聴いていこう。

 

Maybe I don’t really want to know

How your garden grows

As I just want to fly

Lately did you ever feel the pain

In the morning rain

As it soaks you to the bone

 

Maybe I just want to fly

I want to live I don’t want to die

Maybe I just want to breath

Maybe I just don’t believe

Maybe you’re the same as me

We see things they’ll never see

You and I are gonna live forever

 

すごく前向きな歌だ。「死にたくない、生きていたい」。真っ直ぐな歌詞である。一番大切なのは、曲名にもなっている最後の部分だろう。「君とボクは永遠に生き続けるのさ」

この曲を聴く上でひとつ考えておかなければいけないのは「グランジロック」というジャンルの存在だ。80年代の終わりから90年代にかけてアメリカで発展したジャンルである。代表するバンドとしてはニルヴァーナが挙げられる。

グランジロックの世界観はとにかく暗い。「死」や「自己否定」といったネガティヴな曲が多い。ネガティヴとは言え、グランジロックは世界中で人気を博し、ニルヴァーナのカート・コバーンは一躍時の人となった。

 

オアシスは、このネガティヴなアメリカのグランジロックに対し、前向きな曲で反発したのだ。オアシスのみならず、イギリスの様々なバンドが名乗りを上げ、ブリットポップというムーブメントを築いていった。アメリカのグランジロックに対抗するために、イギリスのブリットポップが盛り上がったともいえよう。

 

ボク的には「リヴ・フォーエバー」はもう1つの考えがあると思う。

単に「永遠に生きる」という率直なメッセージだけでなく「ボクはこの曲の中で永遠に生きるんだ」というメッセージも込められているように思う。「たとえ命が尽きても、歌声、ギター、メッセージで永遠に誰かの心に生き続けるんだ」そう伝えているようにも感じる。

彼らの服装も「ありのままを見てくれ」、「ありのままの俺らの音楽を聴け」とわざと着飾らなかったのではないだろうか。派手な衣装よりも、どんなパフォーマンス、魅せ方よりも「歌を届ける」ことを大切にしていたのではないだろうか。「身近」である方が確かにスッとメッセージが入ってくる。

ジャージにもしかしたらそんな考えがあったのでは……? と考える次第である。

 

今回は「音楽とファッション」について書いてみた。皆さんも音楽を聴く時、映像を観る時にその人たちが「どんなファッションをしているか」に注目して聴いてみるのはいかがでしょう。

音楽を視覚的に楽しむ1つの方法である。

 

 

[ライタープロフィール]

コバン・ミヤガワ
1995年宮崎県生まれ。大学卒業後、イラストレーターとして活動中。趣味は音楽、映画、写真。
Twitter :@koban_miyagawa
HP:https://www.koban-miyagawa.com/

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