僕がゲイで良かったこと 第8回

  

第8回 ゲイであることのメリット・デメリットその2

平良 愛香

 その2と書いたけど、前回はほとんど内容には入れなかったので、実質第一回目かもしれません。あしからず。

 ゲイであることの1番のメリットは、「異性と結婚するのが幸せである」という迷信、呪縛に(少なくとも心までは)縛られていない、ということでしょう。もちろん捕らわれているゲイもいないわけではないのでしょうが、異性と結婚して本当に幸せになれると思っているゲイ男性は少ないのではないかと思います。同性に性的指向が向いているのに、異性と結婚するのは「かなりの妥協」「100%の幸福は得られないという前提」で考えているので、過度な期待や妄想を、少なくとも異性との結婚に抱いてはいないのです。ではなぜ、異性と結婚するゲイが多いのか。

 その前に、「えっ? 女性と結婚しているゲイ男性っているの?」と驚く人がいるかもしれませんが、世界中のおそらく大方のゲイ男性は女性と結婚しています。子どもがいるゲイも珍しくありません。ではなぜ???

 実は社会の中で「結婚をしなければ一人前とは見られない」という風潮は想像以上のものがあります。特に男性は「結婚していなければ半人前」だと扱われ、大きな仕事をさせてもらえないことすらあります。(守るべき「家族」がいてこそ、仕事を放り出さずに最後までまっとうする、と考えられているらしい。言い換えると、「家族持ち」ではない男性は、守るべきものがないからいい加減な仕事しかせず、信用ならん、ということなのでしょうか。)仕事以前に、結婚していない男性は「結婚できないモテない未熟な男性」と見られたり、妻子を「養う力」のない男性と見られたり、あるいは、「人と一緒に生きることを煩わしいと思うモラトリアムな人間」と見られてしまうことがあります。世界中を見ると、結婚していない男性はそれだけで「欠陥のある人間」だと見られてしまう地域もあります。日本を含め、世の男性たちは、「結婚しないと不完全な人間だと見られてしまう」という無自覚の恐怖と同時に、自分でも「不完全ではなく一人前の男になりたい」と思って結婚を選ぶということがあまりにも多いなあ、と感じるのです。どうして結婚するのかを本気で考えているのだろうか、といつも疑問に思うのです。「それが当たり前だから」・・・? 本当に当たり前ですか? (結婚の是非について書き始めると際限がなくなるので、この件についてはいったん手を止めます。)

 そういうわけで、ゲイ男性でも異性(女性)と結婚することを選んでいる人が世界には圧倒的に多いのです。そして「子どもがいてこそ一人前」だと考える人は、「頑張って」子づくりをするのです。もちろん、大抵の既婚ゲイは妻をとても大切な存在として認め、愛しています。でももし、その国や地域が「異性と結婚するのも、同性と結婚するのも、あるいは誰とも結婚しないのも全く対等で、比率も同じ」であったとすれば、本当に異性と結婚したのだろうか、と思ってしまいます。そしてそれは、異性愛者の男性に対しても、「異性と結婚して初めて一人前とされるということが、社会が生み出した刷り込みだとすれば、それでも結婚したいのは何故?」と聞いてみたくなるのです。

 もちろん異性と結婚して本当に幸せになる男女がいるのと同様に、異性と結婚して幸せになったゲイもいます。それについてとやかくは言おうとは思いませんが、でもどこかで「う〜ん、異性と結婚することが『成功例』とされるのは、なんかかなわんなあ」とも感じるのです。(あら、とやかく言ってるかも。すみません。)

 僕がゲイであって良かったなあと思うことの一つは、「異性と結婚するのが当たり前」という価値観に疑問を持てたことです。仮に異性と結婚するとしても、「結婚が当たり前」「結婚は幸せの特効薬である」と疑わずに結婚することはないだろうなあ。きちんと疑った上で、判断していくのだろうなあ、その判断ができることそのものがメリットだと思っています。もちろんゲイじゃない男性でもきちんと考える人はいるでしょうが、ゲイであると、そのことを考える機会は必然的に多くなる、と感じています。

 もっと突き詰めれば、「ということは、同性婚を法律で認めてもらえば解決するというようなことではない」ということにも気づかされます。もし法律で同性同士の婚姻を認めるようになったとしても、ゲイの人たちが「これで私たちも一人前になれるぞ」「これで私たちも幸せをつかめるぞ」と思ってしまったら、それは大きな落とし穴に陥ることになります。同性婚を認めて欲しいと訴えている人たちは、「同性婚ができないと幸せになれないから」ではなく、「このことによって、現実に不利益を被っているから」訴えているのです。では、同性同士の婚姻が認められないとどんな不利益があるのか、逆に異性婚の人たちはどんな利益を得ているのか、次回考えてみたいと思います。

 

 

[ライタープロフィール]

平良愛香(たいらあいか)
1968年沖縄生まれ。男性同性愛者であることをカミングアウトして牧師となる。
現在日本キリスト教団川和教会牧師。