僕がゲイで良かったこと 第10回

  

第10回 改めて、僕がゲイで良かったこと

平良 愛香

 僕がゲイで良かった、と一番感じることは、パートナーと対等な関係でいられることです。いやまて、パートナーとの対等な関係なんて、男女のカップルでもできるだろ、って? ところがどっこい。実際に男性のパートナーのいる女性たちに聞いてみると、びっくりするほどほとんどの女性が「対等だとは感じていない」と答えます。経済格差や家事分担、そして極めつけは性生活です。極力対等な関係性を生活の中で維持しようとしているカップルであっても、セックスになると「支配/被支配」の関係が生じてしまう、と多くの女性が答えてくれました。身体の構造上そうなりやすい、ということはあるかもしれません。しかし、それならなおさら、「対等なセックスになっているだろうか」ということに気を遣わねばならないのに、多くの「男性」は、挿入して、射精して、自分だけいい気持ちになって、終わってしまう。「自分は、彼のマスターベーションの道具にされただけのように感じる」と言った女性もいます。「どうしても男性って、セックスのときは女性を支配したがるのよね。自覚していないかもしれないけど」だそうです。うーん、男女が対等にパートナーシップを築いたり、対等にセックスしたりするのって、すごく大変そう……。そもそも、社会の中で男女が対等ではないという実態があり、よっぽど意識しないとそれを乗り越えられないのに、カップルになったら自然に対等になる、ということはあり得ないのですから。

 もちろん、同性間でも「対等なパートナーシップ」になっていないように見えるカップルもいます。逆らえない力関係があることもありますし、DV(ドメスティックバイオレンス=配偶者間暴力)に苦しんでいる人もいます。けれど、異性カップルに比べると、対等な関係を築きやすいのではないかなあ、と感じるのです。(ちなみに、男女のカップルのDVには、それが事実婚だったり恋人同士であったりしても法的な措置がとられますが、同性間のDVについてはあまり知られておらず、警察に駆け込んだとしても「イヤなら別れればいいじゃないですか」と真剣に取り合ってもらえないことがあります。異性カップルにはそんなこと言わないのにね。現在ようやく、同性間DVについても法的措置がなされるようになってきたようですが、現状はまだまだ難しいようです。)

 僕の話をします。僕には男性のパートナーがいます。付き合って22年が経とうとしています。とてもステキな男性です。(ここでノロケ話をしだすと止まらなくなるので、とりあえず先に進みます)。ところが、僕に同性パートナーがいるということを知ると、「どちらが彼氏で、どちらが彼女ですか」と尋ねてくる人がたまにいるのです。いつも一瞬、どういう意味の質問なのだろう、と考えていたのですが、近ごろ僕はこう答えるようになりました。「どちらも彼氏ですよ。せっかく同性同士のカップルなのに、どうして異性カップルの真似をする必要があるのですか」。

 もし異性カップルが「これが彼氏の役割」「これが彼女の役割」と考えて(あるいは考えないまま刷り込まれて)役割を担っているなら、「なんて不自由なのだろう」と思ってしまいます。そんなとき、僕はつくづく思うのです。「ゲイで良かったなあ。パートナーと対等に付き合えて。」そもそも、彼氏・彼女って「カップルの中の男性と女性」という意味しかないと思っていたのに、男性同士のカップルに「どちらが女性?」と尋ねるのって、甚だおかしいと思いませんか?

 ひょっとして、「どちらが『ご主人』でどちらが『奥さん』」という質問? ちゃんちゃらおかしい。どちらも「主人」ではありません。あるいは、「どちらが主導権を持っているのか」という質問? もっとおかしい。仮に主導権を持つ方が決まっていたとしても、それは「彼氏の方である」ということなのでしょうか? さらには、「どちらが外で稼いで、どちらが家事をしているのか」という質問? これもヘン。家事をするのが「彼女」の役割なのでしょうか。それとももしかして、「セックスの時、どちらが挿入する側で、どちらがされる側なの」という質問??? そんなことを尋ねているとしたら、絶対おかしい!!! 

 でも意外と、そういう意図で無意識に質問しているようだ、と感じることがあるのです。無自覚ではありながらの「二人は親密なときに、どちらが支配者で、どちらが被支配者なの?」という意味で「彼氏・彼女」を使っているように聞こえる瞬間があるのです。男女のカップルでは「女性が彼女である」という前提で見られますが、ゲイカップルでは「挿入される側が彼女である」だなんて、一体だれが決めたの?

 ちなみに、男性同士のカップルがアナルセックスをしていると思い込むのも偏見です。僕は教えている大学で、「挿入・射精だけがセックスだと考えるのは貧弱です」と語っています。もっと様々なバリエーションがある(そうでなければ、レズビアンカップルはセックスができなくなってしまうし、事故や加齢などで勃起ができなくなった男性は一生セックスができないということになってしまう)ことを、みんなにも知ってもらいたいなあ。

 僕とパートナーとは、対等な関係性を築くことを楽しんでいます。そんな中、法による「しばり」はいらないと感じているため、もし法制度が整っても「同性婚」は選び取らないだろう、と感じています。そのあたりは次回に続く、かも。

 

[ライタープロフィール]

平良愛香(たいらあいか)

1968年沖縄生まれ。男性同性愛者であることをカミングアウトして牧師となる。
現在日本キリスト教団川和教会牧師。