赤毛のアンのお茶会 第23回

  

第23回 マリラの年齢はいくつ?

南野モリコ

 

 

「彩マガ」読者の皆さん、メリークリスマス! 今年も『赤毛のアンのお茶会』をお読みいただき、ありがとうございました。

 今回は、年の瀬ということで、『赤毛のアン』の年齢について深読みしてみました。「ふーん、へえ、そんな見方もあるのねぇ」とつぶきながら、紅茶片手にお楽しみくださいませ。

 

赤毛のアンのお茶会第23回

イラスト:夢野みよこ

 

『赤毛のアン』には「時間管理」がない?

 

『赤毛のアン』は11歳だったアンが16歳になるまでの5年間の物語です。本コラム第20回でも書いたように、『赤毛のアン』『アンの青春』『アンの愛情』の3部作は、物語の始まりと終わりが同じ月なので、ちょうど5年間を描いているというわけです。

「え、5年も経っているの?」と意外に思う方も多いかもしれませんね。第20章でアンが「今日は私がグリーン・ゲイブルズに来た日よ」と発言する以外は、年月の経過についての表記が見当たりませんから。『赤毛のアン』は作品中の時間管理があいまいなのです。月日の流れは「○月になった」と季節の変化で伝えられています。そして村に咲く花々や木々の描写がそれに続くのです。アンの世界で大切にされるのは、「○年の月日が過ぎた」という現実的な時間の流れではなく、目の前に横たわる季節とその美しさなんでしょうね。

 一方、シリーズ4作目『風柳荘のアン』では一変して、章題に「一年目」「二年目」とついています。レッドモンド大学を卒業して高校教師となったアン。活気ある都会サマーストリートに移り住んだアンが徹底された時間管理の下、きびきびと仕事している姿が浮かびます。

 それでも、アヴォンリー村では変わらず、時間がゆっくりと流れていたことでしょう。のどかで悠久の時を刻むアヴォンリー。そんな理想郷を描くために、時間管理を敢えて怠ったのではないか。想像の翼を広げて遊んで欲しいモンゴメリ流のおもてなしなのかもしれません。まあ、単なる深読みですけどね。

 

アンを引き取った時、マリラは55歳?

 

 松任谷由実さんは著書『ルージュの伝言』(角川書店、1984年)で、ご自身の歌詞に風景描写が多いことについて「聴く人が自分の恋愛と重ねられるから」と書いていました。ユーミンの音楽はアンの世界にも通じるものがありますね。

 

 さて、時間管理があいまいなのは登場人物の年齢にも当てはまります。

『赤毛のアン』第1章で、マリラは「マシューは60歳になった」と言っていますが、自分の年齢については触れていません。しかし、『虹の谷のアン』第2章では、アンは「マリラは85歳になった」と言っています。ここからシリーズを遡っていくと、アンを引き取った時、マリラは55歳。アンとマリラは44歳違いです。

 こうしてアンとマリラをデータ化していくと、『赤毛のアン』の世界観からずれていくように感じます。55歳という年齢はたんに数字でしかなく、あまりにありきたりすぎるからです。自分の年齢を堂々と言える女性もカッコいいけれど、年齢不詳の方がミステリアスで中身を覗いてみたくなりますよね。

 モンゴメリは、登場人物にも「想像の余地」を持たせたかったのではないでしょうか。シリーズが進んでいくうちに種明かしをしてしまったけれど、『赤毛のアン』の重要な登場人物であるマリラのキャラクターを限定しないように、年齢を読者の想像に委ねたのだと深読みしました。

 

 それにしても、ドラマ『アンという名の少女』のマリラ、おばあさん過ぎだと思いませんか?『アン名』は二次創作で、『赤毛のアン』ではありませんが。まあ、個人の勝手な感想ですけどね。

 

参考文献

モンゴメリ著、松本侑子訳『赤毛のアン』(文藝春秋、2019年)

 

[ライタープロフィール]

南野モリコ

『赤毛のアン』研究家。慶應義塾大学文学部卒業(通信課程)。映画配給会社、広報職を経て執筆活動に。

Twitter:モンゴメリ『赤毛のアン』が好き!(ID:@names_stories)

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