赤毛のアンのお茶会 第18回

  

第18回 なぜアンとダイアナは生涯「腹心の友」でいられたのか?

南野モリコ

 

『赤毛のアン』への想いをひたすらつぶやくだけのコラム、第18回となりました。頭の中はアンとアヴォンリー村のことだらけ。ついにはアンとダイアナが幼なじみとして記憶の風景に登場するようになりました。「ふ〜ん、そんな人もいるのねぇ。チョコレート・キャラメルでも食べよ」などと言いながら、気楽にお読みください。

イラスト:夢野みよこ

 

アンとダイアナが守っている友情のルール

『赤毛のアン』の魅力のひとつは、アンとダイアナの友情です。少女の読み物に女の子同士の友情は欠かせないファクターです。

 シリーズ3作目である『アンの愛情』でギルバートと結ばれたアン。レッドモンド大学卒業後は教師となってサマーサイドの「風柳荘」に住み、結婚してからは、フォア・ウィンズの「夢の家」と、アヴォンリ―村から離れてしまいます。しかし、農場主フレッドと結婚し、村を出ることがなかったダイアナとの友情は、生涯変わることなく続きました。『アンの娘リラ』でアンが「ダイアナの息子のジャックも出兵した」と言っていますから、手紙を送り合っていたんでしょうね。

 筆者モリコように、いつの間にか離れてしまった女友達を思い、アンとダイアナの友情に憧れる読者は多いでしょう。大学進学で都会に出てから一度もアヴォンリー村に住むことがなかったのに、結婚式に招待し合い、子どもの誕生祝いを贈り合うどころか、我が子に同じ名前までつけているんです。

「そんなのお話よ。夢なのよ夢」と言う方もいるかもしれません。でも、アンとダイアナのエピソードを深読みしていくと、長く友情を続けるために2人が守っているルールがあることに気付きます。それは、「約束を守る」ということです。

 

『アン』シリーズには、人間関係のヒントが詰まってる?

 第27章で、アンが髪を緑色に染めてしまった時も、なぜアンが学校を休んでいるのか、ダイアナは誰にも話しませんでした。クィーン学院を受験する時にも、「手紙を書いてね」という約束をアンは守り、手紙が届く日にダイアナは、いそいそと郵便局に出かけています。

 第16章「いちご水事件」で怒ったダイアナの母親は、アンと遊ぶことを禁止します。そんな厳しい約束も、アンとダイアナは健気に守っています。こっそり遊ぶことだってできるのに。まあ、どこに目があるか分からないアヴォンリー村で「こっそり」はありえないかもしれませんが。

 約束を守るということはシンプルに見えて、堅い意志が必要です。「内緒にしてね」の重みに耐えきれなかったり、手紙を書くと言って書かなかったりする人がいかに多いことか。

 そんな些細な裏切りにいちいち傷つくことさえなくなった大人も「こんな友達が欲しかった」と思うでしょう。たしかに『赤毛のアン』は小説ですし、物語です。しかしながら、ともすれば蔑ろにされてしまうことまで細かく描いているから、嘘の固まりである物語に命が吹き込まれたのでしょう。

 孤児だったアンが何よりも望んでいるのは、家族を持つこと。そして、家族の一員として、地域コミュニティに根を下ろすことです。そんなアンが悲しむことは、自分の悪い噂が村中に広がること。それは、アンを引き取り育ててくれているマリラやマシューの顔をつぶすことだから。

 優しいダイアナはそんなアンの気持ちが分かり、アンのいやがることは決してしなかったのでしょう。
 小さな約束を守れる2人だから、「一生友達でいる」という偉大な約束も守れたんでしょうね。ま、単なる深読みですけどね。

 

 

参考文献
モンゴメリ著、松本侑子訳『赤毛のアン』(文藝春秋、2019年)

 

 

[ライタープロフィール]

南野モリコ
『赤毛のアン』研究家。慶應義塾大学文学部卒業(通信課程)。映画配給会社、広報職を経て執筆活動に。Twitter: モンゴメリ『赤毛のアン』が好き!(ID @names_stories)

赤毛のアンのお茶会 バックナンバー