湘南 BENGOSHI 雪風録 第12回

  

◇4月○日

 新しい制服に身を包んだ学生さんがたくさん行き交っている。

* * *

 自分自身が学生だったとき、制服の新しさに意識が向いていたかどうか、正直記憶がない。なのに今は、交差点の向こう側にいる学生さんの新しい制服が、日差しの中でひときわくっきりとみえる。信号が青になってすれ違うとき、制服の新しいことだけでなく、その制服を着た本人の新しいことが、たとえマスクで顔の半分が隠れていてもはっきり目に焼き付く。
 何に対してかはわからないまま、自然と祝うような気持ちが湧いてくる。

◇4月11日

 宝塚歌劇団・雪組公演「fff/シルクロード」の千秋楽だった。

* * *

 宝塚については、ほぼ毎回彩マガに書いている。なぜなら宝塚がはちゃめちゃに好きなので、書かずにはいられないからです。前には一度、宝塚の話をメインで書いた。その回は、自分の中の真実を、変に推敲したり装飾したりせず、ただ言葉にできたと自負していて、周囲からの評判も良かったので嬉しかった。彩マガのページリニューアルに伴い、古いものは今見られないから、ここに自分の書いた文章の一部を引用する。


「宝塚を観ると異様なまでに元気が出る。私に今後、辛いこと悲しいことが起こっても、宝塚がある限り、それらを乗り越えてゆけるだろうという完全に根拠のない(合理的でもない)自信を、宝塚によって給油ノズルガチャ押しチャージするのである。」

「最近私は、この人生が、1回使い切りタイプなのではないかという悪い予感を持つに至り、小説を、芝居を、映画を、それらに投射された他人の人生を、狂おしい気持ちで見つめるようになった。」


 はい。今日、望海さん(雪組トップスター男役)が退団の挨拶で、生まれ変わっても宝塚で会いましょうとおっしゃいました。ので前言はあっさり撤回します。100万回でも生まれ変わるね。
 この職業を選んださだめとして、いろんな人の辛いことや悲しいこと(作中では「運命」と呼ばれていた)に日々立ち会っている。正直、この仕事をするまでは、こんな身近に、あまりにも苦しいことが日々起こっていることについて、あまり意識せずに生きてこられた。自分の荷物こそ見えてはいたけれど、どんな人にもそれぞれに背負っているものがあるという、今ある実感にまでは至っていなかった。私はただの人間なので、運命そのものをねじ曲げることはできず、なんとか都度都度手当てに取り組む毎日なのだが……。でも、法律で手当てすることが適した問題というのは意外とあるから、悩んだ時は一度弁護士に相談してみて欲しいという気持ちは持っています。
 宝塚をなぜ好きといって、それはみんなが一生懸命舞台の上から、愛とか夢とか希望とかを歌ってくれるからだ。
 人生に対する態度を決めること-愛とか夢とか希望とかを信念としてもつこと-も法律と並んで、運命に対応する方法の一つと最近より強く感じるようになっている。
 退団者の皆さん本当に素敵でした。今まで本当にありがとうございました(まだ若干涙がでてしまう)。もしかしたら宝塚在団中よりは時間の余裕がでてきて、そこら辺を散策されるかもしれない。ということは私も道で会うかもしれない。いつばったり会ってもいいように(いらない心配)、いつも小綺麗にしておきたい。赤面せずに済めばいちばんよいのですが(もっといらない心配)。
 そして宝塚を愛する者として恥ずかしくない仕事をしたい。

 

 

[ライタープロフィール]

山本有紀

1989年大阪府生まれ。京都大学卒業。
大学時代は学園祭スタッフとして立て看板を描く等していた。
神奈川県藤沢市で弁護士として働く。
宝塚歌劇が好き。

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